内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

「まあいい。そういう理由なら、無理に毎日着けろとは言わない」

 無表情だが、怒っているわけではなさそうだ。

 気持ちを汲んでもらえたのがうれしくて、笑顔を返す。

「ありがとうございます!」
「……こっちのセリフだ」
「えっ?」
「なんでもない。次は服だったな」

 軽くはぐらかされて、彼に手を引かれるまま次の店へと向かう。

 よくわからないけれど彼の纏う空気がいつもよりやわらかい気がして、鼓動がトクトクと優しい音を奏でていた。


 ショッピングのついでに外で夕食を済ませ、デートから帰宅したのは夜九時ごろ。

 帰り道の途中、龍一さんが少し回り道をして夜景の綺麗な場所を通ってくれて、私は子どものように「すごいすごい」とはしゃいだ。

 偽装結婚に向けての訓練の一環だというのに反省点や次回の目標について考えるのも忘れてしまったので、龍一さんの中ではシビアに減点されていたかもしれない。

 それでもいいと思えるほど、単純に楽しかった。

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