内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
瞬間、ふわっと彼の纏うフレグランスが香り、距離が近いことを意識する。
前に回したままの留め具を弄る彼の手が、必然的に肌に触れてくすぐったい。
自分から頼んだとはいえ、けっこう恥ずかしいお願いをしてしまったかも……。
「ほら、外れた」
そんな声にホッとした瞬間、ふと目線を上げた龍一さんと目が合う。
時間が止まったような気がした。なにも言葉はないのに、鼓動が高鳴る。
彼の深い漆黒の瞳が、熱を孕んでいる気がして……。
龍一さんの眼差しに囚われてぼんやりしているうちに、長い睫毛を伏せた彼の顔が近づいてきた。
えっ――?
心の内で声をあげるのと同時に、唇に柔らかいものが触れる。それが龍一さんの唇だと気づいた頃には、口づけがすでに終わっていた。
しかし、記憶にはしっかりとその感触や温度が刻まれた。
……だって、私のファーストキスだ。
「龍一さん……?」
全身が熱くて、心臓が痛いくらいに脈打っている。
こんな感覚は初めてで、自分がどうにかなってしまいそう。私、どうしてこんなに……。