内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
胸の内で盛大な独り言を繰り広げた後、真智本人にも苦言を呈した。それでも苛立ちは収まらず、食欲がなくなったので何も食べずに食堂を出た。
あの時の俺の様子を、真智の上司であり俺の大学の先輩でもある石狩さんは『嫉妬だ』と言っていたらしいが、さすがにそれはないだろう。
なぜなら、俺は本気の恋愛をしたことがない。
降矢の名と社会的地位、そして他人から見ると人並み以上に整っているらしいこの容姿を目当てに近寄ってくる女性たちにさんざんアクセサリー扱いをされてきたせいで、基本的に女性は苦手なのだ。
そうなる過程で、恋をする器官も一緒に退化したと思っている。だからこそ、偽装結婚を望んだはずだった。
しかし、真智が他の女性たちとまったく違うのも、また事実で……。
「あっ。お風呂ですか? すみません、今終わったのですぐどきます」
寝る前にシャワーを浴びようとバスルームへ続くドアを開けたら、洗面所で歯を磨いていた真智と鉢合わせた。
ちょうどうがいを終えたらしい彼女が、慌てて濡れた口元にタオルをあてる。
眼鏡を外したすっぴんの顔はあどけなく、ゆったりとしたコットンのルームウエア姿に無防備な魅力を感じる。
この姿を他の男に見せたくないと思うのは、やはり嫉妬なのだろうか。