内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「羽澄、ちょっと」
「はい。なんでしょう?」
書架の並んだオフィスの隅に連れていかれ、腕組みをした石狩部長と向き合う。
彼が渋い顔をしているので、仕事で何か迷惑をかけただろうかと不安になった。
「あの、なにかよくない話でしょうか……?」
「まぁ、お前にとってはそうかもしれん」
「私にとって?」
奥歯にものが挟まったような言い方をされ、首を傾げる。
部長は仕事のダメ出しでもなんでも、いつもならハッキリ言うタイプなのに。
「ああ。……アイツ、シンガポールから帰ってきたろ?」
アイツって……もしかして。
石狩部長は、三つ子の父親である龍一さんの大学の先輩にあたる。なので、後輩である龍一さんと部下である私の交際がうれしかったらしく、時に冷やかしながらも温かく見守ってくれていた。
「龍一さんがなにか……?」
「お前さんと腹を割って話したいそうだ。もちろん、今の羽澄が子持ちで、しかもその子どもが三つ子だなんて余計な話はしてない。ただ、話し合うことには賛成した」