内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「どうしよう……」
龍一さんがいなくなるとともに騒がしさを取り戻したオフィスで、ぽつりと呟く。
私と彼は確かに婚約者同士だったけれど、彼がシンガポール出張へ行っている間に、私が一方的に破棄した。
そうでなくても、私たちの婚約は偽装結婚の単なる布石だったのだ。改めて話し合うことなんてないはずだ。
ちら、とパソコンのモニターから視線をずらし、デスクの上に飾ってある写真を見る。
三つ子がまだ0歳の頃、同じように大の字になって眠っているのが微笑ましくて撮った写真だ。
彼らは自分たちに父親はいないものだと思っている。『お母さんしかいないおうちもあるんだよ』と、私が説明しているからだ。
今はなんとなく受け入れてくれているけれど、成長すれば自分たちの出生について、疑いを持つかもしれない。
その日が来たらどうするか、彼らを産んでからずっと考えているけれど、答えは出ない。
私はあなたたちの父親を愛していたけれど、彼の方は違った。
そんな真実を告げるのは、残酷すぎる気がして――。
不意に胸が苦しくなって、ギュッと目を閉じる。
龍一さんと過ごした甘く切ない日々が、頭の中を走馬灯のように駆け巡った。