内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
途切れた甘い夢の続き
夢叶の試作品第一号は年が明けた二月に無事完成し、明かりを落とした会議室でのお披露目会では年配の役員たちですら『おおっ』と盛り上がっていた。
明かりを点けた瞬間、同じく会議に参加していた龍一さんが『よくやったな』と言わんばかりに優しく微笑んでくれたのが目に入る。
つい顔を赤くしてはにかんだら、隣の席の石狩さんに咳ばらいをされてしまい小さくなった。
プライベートでも、龍一さんがシンガポールへ発つ春までは蜜月とも呼べるほど親密な時間を過ごした。
好きだとか愛してるの言葉はないけれど、本物の婚約者かそれ以上に大切にしてもらっている、そんな実感があった。
いっそ彼に告白してしまおうか。そんな思いも頭をよぎったものの、想いを告げたせいで彼との関係が崩れ、気まずい別れになってしまうのは避けたかった。
三年間離れていたとしても、私の気持ちは絶対に変わらない。
だったら彼が帰国してから、きちんと伝えた方がいい。最後にはそんな結論に至った。
そうして自分の気持ちを明かさないまま、彼がシンガポールへ旅立つ日を迎えた。