内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
温かい布団に未練を残しつつものっそり体を起こし、手首につけっぱなしにしていたゴムで鎖骨の下まであるミディアムヘアを束ねる。
それからおもちゃ箱の上に無造作に置いていた眼鏡をかけると、寝室兼子ども部屋の和室を出た。
ふわぁ、とあくびをこぼしたところでリビングのドアが開き、駆け寄ってきたパジャマ姿の麦人が私の足にすがりついた。
「ママあぁぁ……!」
「おはよう。どうしたの、麦」
まだ100センチにも満たない二歳半の小さな体を抱き上げ、優しく声をかける。
本当の名前は麦人だけれど、家では略して麦と呼ぶことの方が多い。同じように長男の秋人のことは秋、楓人は楓と呼んでいる。
今年の誕生日で三十歳になる私、羽澄真智は、三つ子を持つシングルマザーなのである。
「アキ、ぶったぁ」
「……どれ、見せてごらん」
小さな手の甲を見せてくる麦だが、その肌は傷ひとつなく、つるんと綺麗である。
しかし、兄弟げんかがあったのは事実だろう。次男の麦は、毎日のようにやんちゃな長男の秋人に泣かされているから。