内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「龍一さんの方にいっさい愛情がなくて、彼の立場や家のためにまた偽装結婚を提案してくるようなら断りなさい。今まで通り、私が父親代わりをするから」
偽装結婚という特殊な婚姻の形を選ぼうとしたせいで、私は苦しんだ。
姉もそのことがわかっているから、あえて厳しいことを言ってくれているのだろう。私も同じ気持ちだ。
姉に迷惑をかけ続けるのは心苦しいが、偽りの結婚生活に三つ子まで巻き込むわけにはいかない。
「でも、そうでないなら」
覚悟を新たにしていたら、姉がふっと表情を緩めた。三つ子との生活にいっぱいいっぱいな時、いつも私を助けてくれた優しい姉の顔。
「母子ともども、たっぷり愛してもらいなさい。私だって、真智の恋は報われてほしい。そっちが本音だもの」
「お姉ちゃん……」
「でも、三人とお別れになるのはめちゃくちゃ寂しい……! 今のうちにいっぱい遊んでおこうっと。麦、楓、覚悟はいい~?」
キッチンのベビーゲートに近づきながら、姉が両手をあやしげにワキワキ動かす。
「あっ、みちゃとねえ、こちょこちょだ」
「にげよう、ムギ」
「待~ち~な~さぁ~い」
ふたりはきゃっきゃはしゃぎながらリビングに逃げ込んだが、ひとりでテレビに夢中になっていた秋は状況を理解しておらず、姉に捕まってしまう。
そのまままんまとくすぐりの刑に処され、ケタケタ笑っていた。