内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

 座学研修の最後には試験があるっていうのに、そんなに呑気でいいのだろうか。

 なにかしらの学びを得て帰らなければ、私たちに期待してこの旅行を企画してくれた上司や先輩方に顔向けができない。

 私は気楽そうに観光する同僚に小さくため息をつくと、かけているメガネのブリッジを押し上げて再び川沿いの景色に目を向けた。

 手元のメモに【ゆっくり進む川船】【船頭さんの身に着けたオレンジ色の法被が目に鮮やか】【屋根の上で風見鶏がくるくる回っている】など、目に入ったものを次々書きつける。

 使用しているペンもメモ帳も、もちろんSparcilのものだ。

 使いやすさを追求したボールペンは手にしっくりと馴染むし、メモの書き心地もバツグン。ステーショナリー開発部の一員として、先輩たちの実績に感心するばかりだ。

「ここは最高ね。ホントに映える景色ばっかり」

 不意に、明るいベージュのパンツスーツと風になびくふわふわの長い髪が視界に入る。

 ケースにキラキラのグリッターが敷き詰められたスマホを手にして人懐っこい笑みを浮かべているのは、同期の小峰詩(こみねうた)

 すらりと背が高くタレント顔負けの華やかさがあるだけでなく、頭の回転が速く優秀。常務の娘でもあるため、社内で高嶺の花的存在だ。

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