内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「おはようございます、社長。このたびは、娘の件でご迷惑をおかけして申し訳ありません」
整えられた髭を口もとにたくわえた、白髪の紳士。彼は、なにかとお騒がせな小峰詩の父親だ。
「小峰常務。……いえ、あなたのせいではありません。頭を上げてください」
「いいえ、私が間違っていたのです。純粋な勉強のためならばと先代社長に頼み込んで娘のシンガポール行きを許可してもらったせいで、逆に娘の恥をさらす結果となってしまった」
静かに上階へ上がっていくエレベーターの中で、小峰常務が悔しげに語る。
確かに三年前、彼女がシンガポールへついてきたのはかなり驚きだった。
当時の出張は、父から与えられた、社長就任前の試練のようなもの。今後、アジアで販路を拡大するための貿易拠点となる港の視察や現地の商社と交渉を、ほとんど自分ひとりの力で行う予定だった。
そこに小峰詩がアシスタントとして送り込まれ、不本意にも行動をともにすることになってしまったのだった。
彼女は真智を目の敵にしているが、こっちにいる間はくだらない嫌がらせなどができない。
その点においては安心だったが、隙あらばボディタッチをしてきたり、俺のスマホを覗き見てきたり、煩わしいことこの上なかった。