内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

 日本にいる間に試作品は見ていたものの、より洗練されたデザインでようやく完成した夢叶を見て、胸が熱くなる。

 夢望の持つコンセプトを踏襲しているのは明らかで、かつ、夢望が抱えていた問題点を『夜光鉛筆』という形でクリアした、真智渾身の商品。

 できることなら、一緒に完成を祝いたかったが……今の彼女はそれを望んでいない。

 石狩さんの話を聞く限り、今の真智は必死で頑張っている最中。だったら俺も、こちらで成し遂げることに全精力を傾ける。

 真智のことを諦めるわけじゃない。

 俺は予定通り、三年後に彼女を迎えに行くだけだ。

 心に活力を取り戻した俺は、ほとんど休日を取ることもなくSparcilのために働き続けた。

 相変わらず小峰はそばにいたが、英語も扱えない彼女は何の役にも立たない。

 俺が真智を認めるきっかけになった研修のテストでカンニングをするような社員だからもとより期待もしていなかったが。

 そっけない態度を崩さない俺に、小峰の方も段々と張り合いがなくなってきたようだった。

 日本でおとなしく広報部の仕事をしている方がまだ充実していただろうに、勢いでシンガポールなんかについてくるからこうなるのだ。

 盛大に呆れている俺に気づいているのかいないのか、シンガポールへ来て半年ほどが経過した頃、彼女から退職願を渡された。

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