内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
『私、シンガポールの長者番付に載ってる相手と結婚するんです。彼が仕事は辞めてほしいって言うので、すみません』
聞いてもいないのに、しおらしい演技までしてそんな嘘をつく小峰にもはや返す言葉もない。
話半分に聞き流し、まったく感情をこめずに「おめでとうございます」と言った。
彼女とは、それで終わった。……はずだった。
しかし小峰詩は、最近また世間を騒がせている。彼女お得意の、SNSを使って。
つい最近目にしたくだらないネットニュースの内容を思い出していたら、エレベーターが役員専用フロアに到着する。常務は俺を先に下ろし、トボトボと後ろを歩く。
「すでに会社とは関係がないはずなのに、『元Sparcilの社員』だなんて書く週刊誌にも悪意がありますが、すべては本人が蒔いた種。辞めてもなお会社に迷惑をかけ続ける娘に、私はもうどうしたらいいのか……」
常務の心労は計り知れないが、小峰だって成人だ。これからの身の振り方は、自分で考えるしかないだろう。
頭の片隅でそう思うものの、もしも自分の子が他人に迷惑をかけたら……そう考えると、あの可愛い三つ子のためならどんな罪もかぶってしまいそうな自分がいた。