内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

「おはようムギ、昨日はごめんね」
「おねつ、ないない?」
「うん、もう下がったよ」

 しゃがんで目線を合わせ、寝ぐせのついた髪を撫でてやる。麦人はこの上なく嬉しそうに微笑み、昨日は不安だったんだろうなと察する。

 よく頑張ったね、麦……。

「うおおお、ちゃき、ちゃきーん」

 よくわからない擬音を口にしながら突進してきたのは秋人だ。たぶん、秋人なりに喜びを表現しているのだろう。

 去年のお遊戯会で踊ったダンスを私の周りで舞い踊り、とにかくテンションが高い。

「おはようママ。……もうげんき?」
「うん、元気だよ。今日はみんな保育園に行こうね」

 ゆうべ、楓人が踏み台を使って冷凍庫を開けた時には驚いた。キッチンにはベビーゲートをつけているが、サイズの都合で冷蔵庫だけはゲートの外なのだ。

「危ないからダメ」と言ったのだが楓人にしては珍しく言うこと聞かず、小さな手で持ってきたのはひと粒の氷。

 それを私の額に乗せてくれたのだが、氷はすぐに解けてしまうし滑って落ちてしまう。そのことに気がつくと、今度は持てるだけの冷凍食品を引っ張り出して、私の顔の周りに置いてくれたのだった。

 その精一杯の看病が、どれほど嬉しかったか……。

 感謝を伝えるように、目の前の小さな頭を両手でたくさん撫で、ギュッと抱きしめた。

< 232 / 247 >

この作品をシェア

pagetop