内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
嘘をつくのも難しい

 土曜日の夕方、研修旅行を終えて都内の自宅に帰宅した。

 姉と同居している小ぢんまりしたアパートは2LDK。休日だった姉にお土産のきびだんごを渡し、「一緒に食べよう」と緑茶を淹れた。

 姉とは昔から喧嘩ひとつせず、母が亡くなってからはより協力し合って仲良く暮らしてきた。

 でも、もし専務と結婚するなら、姉との同居もおしまいなんだよね……。

 ダイニングテーブルを挟んで向き合った姉が「いただきまーす」とうれしそうにきびだんごの包みを開ける姿を見ていると、なんだか寂しくなってくる。

「お姉ちゃん、折り入って相談なんだけど」
「んー? どうしたのよ改まって」

 姉が口をもぐもぐさせながら、きょとんと目を丸くする。

「会社の上司にさ……偽装結婚を提案されたんだけど、どうしたらいいかな?」
「えっ? ちょっとなにそれ。偽装結婚? 上司って誰?」

 思い切り顔をしかめた姉から矢継ぎ早に質問が飛んでくる。想定の範囲内だ。

 当事者の私だって未だに〝ちょっとなにそれ〟という思いが拭えていないのだから。

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