内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「断ったら、出世に響いたりしてね」
「えっ? それは考えてなかったな。けど、あり得なくもないか……」
専務がそんな公私混同をするとは思えないが、彼にとって結婚も〝公〟のうちに入るのだとしたら、断った私は業務命令に背いた社員ということになる?
「ところで、一番重要な真智の気持ちはどうなのよ。生理的に受け付けない相手なら、たとえ偽装結婚でも嫌でしょう?」
「それは……大丈夫だと思う。むしろ尊敬している相手だし」
言葉を交わすだけで緊張はするけれど、専務は威圧的なわけでもなく、むしろ友好的な態度だ。男性に免疫のない私が勝手にどぎまぎしているだけで。
「だったら、偽装結婚もアリだと私は思うな。お母さんが理想としていたような、対等な夫婦関係を築けそうだもの」
姉の意外なアドバイスに、目を瞬かせる。
確かに生前の母は結婚するなとは言わなかったが、男の人に依存せずに生きろと言うのが口癖だった。
つまり、偽装結婚と言う夫婦の形はむしろ好都合?
少なくとも、周りが見えなくなるほどの熱烈な恋をして結婚に至るよりは、母の賛同を得られるような気がする。