内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
またしても、とんでもない提案をする龍一さん。私がそんなことを言ったら、妄想、または幻覚・幻聴にとらわれている痛い女だと白い目で見られるだけだ。
「その言い分では誰も納得しないですよ」
『どうしてだ』
「どうしてって……」
私と龍一さんとでは、住む世界が違う。それが、社員共通の認識に違いないからだ。
『なにを不安がっているのか知らないが、論より証拠。仲睦まじい俺たちの姿を実際に目にすれば、周囲も納得せざるを得ないだろう。今後はそのつもりで振舞うからきみも合わせてくれ。くれぐれも、偽装結婚だと気取られないように』
「は、はい」
そうだ。私だけ卑屈になってオドオドしていても、迷惑を被るのは龍一さんなのだ。ひと目惚れというのがどんなに不自然な言い分でも、無理やり押し通すしかない。
すぐに心がグラついてしまう自分を叱咤して、覚悟を新たにした。
『それじゃ、明日は午後一時に伺うよ。お姉さんによろしく伝えてくれ』
明日龍一さんは引っ越し業者より早めに家へ来て、姉にひと言挨拶してくれるそう。
会社の人たちとは違い姉は偽装結婚の事情を知っているので、取り繕う必要がないだけ気が楽だ。
「わかりました、よろしくお願いします」
電話を切ると、ベッドの上で大の字になる。自分の生活にここまで大きな変化が訪れるのは初めてで、不安と高揚感がごちゃまぜだ。
ゆっくり深呼吸をして目を閉じても、なかなか眠気は訪れなかった。