内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「素敵な考え方ですね。私たち、父親がろくでもない人だったので、あまり男の人を信用していなくて……でも龍一さんのような方になら、安心して真智を預けられます。たぶん、母も同じ気持ちです」
そう言って、姉がちらりと仏壇の隣に置かれた母の写真を見やる。龍一さんも同じように視線を動かして、穏やかな目で母の写真を見つめた。
「それは光栄です。お母さんにお線香をあげてもよろしいですか?」
「もちろんです。ありがとうございます」
香炉に線香を立てて両手を合わせる龍一さんの真剣な横顔に、偽装結婚の相手にここまでしてくれるんだなと少し驚いた。
姉への挨拶はともかく、故人である母にまで誠意をもって接してくれるなんて……。
私も龍一さんのために、しっかりお役目を果たさなくては。
しばらくすると引っ越し業者がやってきて、私の少ない荷物をあっという間にトラックに積んでしまう。
作業に立会うのが終わると、姉に別れの挨拶をして、龍一さんの車が停めてあるという近所のパーキングへ向かった。