内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
彼がロックを解除すると、シックな黒いセダンのライトが一瞬光る。龍一さんに促されて助手席に座ると、芳香剤か彼のフレグランスか、ほのかに甘い香りがして鼓動が跳ねた。
先日石狩課長と出かけた時だって、男性とふたりきりで車に乗るというシチュエーションは同じ。
しかし、あれは仕事だからドキドキしないで済んでいたのだと、今さらのように気がついた。
緊張しながらただ前をジッと見ていると、骨ばった手をシフトレバーにかけた龍一さんがこちらを一瞥する。
「きみは行儀がいいな」
「えっ……?」
ビクッと肩を跳ねさせて、龍一さんを見る。
ただじっとしていただけなので、行儀がいいも悪いもないと思うのだけれど。
「今まで助手席に乗せたのは、乗った瞬間から品定めするかのようにあちこち観察する女性ばかりでね……毎回辟易していたんだ」
「観察……車がお好きな女性だったんですかね?」
首を傾げつつそう言うと、龍一さんが思わずといった感じにふっと笑った。
おかしなことを言ったつもりはないので、きょとんとして目を瞬かせる。