【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
(皇室の人に知られてしまうなんて、わたしはこれから、どうなるんだろう)
教国に送還、または癒しの力を利用するため皇城で拘束されてしまうのだろうか。先の見えない不安が、シャノンの心に憂いを残していく。
「……おまえは、なにを浮かない顔をしている。まさか、無駄な苦労を考えているわけではあるまい?」
「……っ」
そこまで負のオーラが出ていたのだろうか。いつの間にか床に目線を落としていたシャノンの下顎を、ルロウは軽々と上に向かせた。
余裕そうに細められた真紅の瞳が、シャノンをじっくりと眺める。
「正式な婚約者にと考えている女を、そうやすやすと手放すと思うか」
虚勢ではない言葉に、胸が跳ねる。
「あれ、やっぱりそうなの、シャノン!」
「フェイロウの奥さんになるってこと〜?」
「もうヨキ、ちがうよ。それは結婚でしょ。結婚を前提にする約束が婚約なんだって」
「あ、そうだった〜」
双子は当人たちを置いて好き勝手騒いでいる。
まさか昨夜の話をこのタイミングでされるとは思わなかったので、シャノンは返事に躊躇してしまう。
そもそも自分が決められることではないと、シャノンは助け舟を求めてダリアンを見るが、なにやら嬉しそうにニヤニヤしている。
「つまり、本当に私の娘になる日も近いというわけだな」
「と、当主様!?」
皇家が介入するかもしれないという状況でも、シャノンの前で繰り広げられる光景は信じられないほど呑気なものだった。