【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
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「クア教国は癒しの力で毒素を浄化できるようになったということか……しかし、そのような報告は受けていなかったが。なにか知っていることは?」
「わかりません。わたしが教会で暮らしていたときも、癒しの力が毒素を消すとは聞いたことがありませんでした」
相手がヴァレンティーノ家当主だとわかり、シャノンは抵抗せず知っていることは全部話すことに決めた。
逆らう者には容赦しない残虐性のある闇夜の一家に逆らうなど、シャノンにはできっこない。
「ということは、お前が特別ということかな?」
ダリアンの獲物を見定めるような目つきに身が竦む。
しかし、シャノンは返答できないでいた。
(わからない。教会にいたときは、ただ公務を繰り返しおこなっていただけ。怪我人も、精神を病んだ人も平等に。そして、不浄を祓う。だけど、毒素のことは本当になにも……)
聖女が扱う『癒しの力』は、光属性の魔力を宿す女人だけが聖女となる洗礼を受けてはじめて使える能力。中には深い古傷や病を治せるほど強い力をもった聖女もいたが、シャノンは違った。
「心当たりも……その様子じゃなさそうだな」
「わたしはただ、言われるままに見世物小屋に来た人を癒していただけです。毒素が浄化できるとわかったのも、それぐらいの時期でした」
「……ところで、なぜ聖女が教会を出るような状況になっている? あのような場所に囚われていた理由は?」
シャノンは数年前の自分の身にあったことを話した。
それを聞いたダリアンはぐっと眉を顰める。放つ空気からは、わずかに怒りが滲み出ていた。