【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
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謁見の間に入ると、そこにはすでに皇帝と皇太子の姿があった。
シャノンの想像では、もっと仰々しい作法やしきたりがあり、跪いて会話するものだと思っていたのだが、そんなことはなかった。
「待っていたぞ、ヴァレンティーノ。次期当主も息災のようだな。して、その者が……聖女殿か?」
「はは、ルロウとは随分仲が良いみたいだ」
皇帝はシャノンをじっくり見据え、隣に立つ皇太子は愉快そうな笑みを浮かべている。
ルロウはというと、ここへきてようやくシャノンを降ろし立たせてくれた。
「はじめまして。シャノンと申します。以前は教国で……聖女をしていました。今はヴァレンティーノ家にお世話になっています」
「シャノン殿、会えて光栄だ。そのドレス、とても似合っているよ」
「……あ、ありがとうございます」
シャノンのためにタウンハウスの使用人らが用意したのは、細やかなレースが美しく、静かな夜の空を彷彿とさせる深い藍色のドレスだ。
スカートが揺れるたび、小さく散らばった宝石が星の瞬きを演出しており、髪には以前ルロウが贈ってくれたリボンが結われている。お守りだといって、出発間際にハオが付けてくれたのだ。
そしてヴァレンティーノの家門色である「暗闇」と同系統の色のドレスをシャノンに着せて登城させるということは、シャノンがヴァレンティーノ側の人間だという主張を暗にほのめかす効果にも繋がっていた。
シャノンも薄々そうではないかと感じていたので、皇太子のお褒めの言葉になんとも言えない気持ちになってしまう。
立ってする話でもないからと、それぞれ椅子に腰をかける。
給仕に茶を用意させたあとで、皇帝は人払いをした。