【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
33話:始祖血族
シャノンが教会を追い出されてから現在に至るまでのすべてを話し終え、事情を理解した皇帝と皇太子は、シャノンに労いの言葉をかけてくれた。
それは決して同情や憐れみではなく、強く前に進んでいるシャノンに対しての、敬意が込められたものだった。
その後、ダリアンは聖女の存在を秘匿していたことについては咎められたが、公式の場で処罰を受けることはないという。それを聞いてシャノンは心底安堵した。
「聖女殿。そう心配せずとも、ヴァレンティーノに恨みを買うことは皇室としても避けたい。故に多少の傲慢も目を瞑ろう」
皇帝はそんなことを言っていた。
拍子抜けするほどに、ダリアンと皇帝の間に流れている空気は穏やかで。世間が持っている印象とは違い、現在の皇室とヴァレンティーノ家は良好な関係を築けているようだ。
それどころかダリアンと皇帝は昔馴染みという間柄であり、ダリアンのことを年の離れた弟のように思っている節がある。
「あの頃のクソガキが今や立派な当主とは、時の流れというのは本当に早いものだな」
「皇帝がそのように低俗なお言葉を使うのはいかがなものかと」
(この二人、なんだか楽しそうに話してる……)
あくまでもシャノンが傍から見て抱いた感想だが、正直間違っていないのではと思う。
「シャノン殿の事情は分かった。ヴァレンティーノの主張としては、変わらず保護を望むということだね。……婚約関係を打診中というのは、そちらで勝手にやってくれて構わない。婚約するしないにしても、定期的に近況は報せてもらうけどね。身を置く場所については、シャノン殿の意思を尊重しよう」
シャノンが毒素の浄化ができると分かっている以上、これから色々と協力することは増えそうだが、自由を奪うようなことは一切しないと約束してくれた。
「……それで、おまえが書簡で言っていた、呑んで欲しい提案というのは?」
ルロウが尋ねると、皇太子は眉を下げ、シャノンに目を向けた。
「シャノン殿に、ある人物の毒素の浄化を頼みたい。君は教会を追放された身だから、あまり気持ちのいい相手ではないかもしれないけど」