【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
34話:刻印、完全解除
青年長の浄化は、三十分ほどで完了した。
まだ意識を取り戻してはいないが、過剰有毒者特有の症状が消えているので、すぐに回復の兆しが見えるだろう。
次にシャノンは、付き添いの使者たちにも同じように浄化を施す。最後の一人あたりで足元が覚束なくなり始め、ふらついたところをルロウは無言で支えてくれた。
おそらく教会という特別な場所からあまり出たことがないため、彼らは短期間外に出ただけでも、毒素の影響を受けやすくなってしまったのだろう。
青年長以外は過剰有毒者ではなかったため、シャノンは魔力切れを起こして倒れることなく、すべてに癒しの力を使うことができたのだった。
――後日、シャノンはルロウと共に改めて皇城を訪れた。
皇太子宮にお邪魔すると、顔色がすっかり戻った青年長がシャノンを出迎えてくれた。
「この度は、本当に助かりました。まさか自分が過剰有毒者だとは知らず、多くの方々にご迷惑をお掛けしてしまいました」
十代後半ぐらいの年齢だと思われる青年長は、腰が低く丁寧な物腰がとても印象深い人間だった。
クア教国民にとって聖女は民に寄り添う光であり、誰もが敬う国の象徴である。始祖血族は、その聖女すらもこうべを垂れて接する高貴な存在として扱われていた。
もう聖女の強固な精神は抜けているとはいえ、教会にいたときは天の上の人たちであった始祖血族の、それも長である彼を前にシャノンは身が引き締まる思いでいた。