【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
シスターの願いもあって、シャノンは青年長を含めた始祖血族派から長い間探されていたのだという。
(……シスター……)
記憶返りによって、シスターとの思い出も多くが蘇った。
遠い場所にいるシスターの気持ちを知ると、瞳にじわりと涙が滲む。
「彼女は僕に言いました。もし、シャノン殿を見つけることができたのなら――刻印を解除して、どうかあの子を自由にして欲しいと」
遠縁とはいえ、始祖血族であったシスターは、聖女がどのように生まれるのかを知っていたのだろう。
だからこそシャノンが聖女の資質を見出され教会へ行くことを憂いでいた。シャノンを引き留めたくても、教会に逆らうことは許されないことだったから。
「こうしてシャノン殿とお会いして分かりました。あなたの様子や刻印の気配が薄まったところを見ると……自力で洗脳を解いたのですね」
やはり聖女の刻印には、洗脳効果があった。
そして、毎朝の「暁光の祈祷」を前に液体薬を飲ませ、刻印から流れる魔力と反応させることで体の成長を妨げていたのだ。
「刻印の解除は、始祖血族の長たる僕に与えられた権利。改めてあなたのご意志をお聞きしたい。……シャノン殿は、刻印の完全解除を望みますか?」
願ってもいないことである。
刻印が消えれば、聖女の呪縛から完全に解放される。
一人の人間として、生きることをようやくすべてから許されるような気がした。
「刻印の解除を、お願いいたします」
シャノンの答えは決まっていた。
迷うことはない。青年長に深々と頭を下げる。
「長きに渡り、聖なる光の使徒としての役目、ご苦労さまでした」
こうして、シャノンの首裏にあった刻印は、綺麗になくなったのだった。