【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜

35話:急成長




 落ち着いたら、シスターに手紙を出そう。
 困難はたくさんあったけれど、何とか乗り越えて元気にやっていると。

 聖女の刻印が解除されたシャノンは、一応クア教国の「聖女」という称号を無くしたことになる。
 とはいえ、癒しの力や浄化の力が消えたわけではない。闇属性の魔力を扱う闇使いのように、これからも能力による呼称のひとつとして聖女と呼ばれることもあるだろう。

 これで晴れて完全解除に至ったシャノンだが、直後ということもあって特に変化を感じることなく拍子抜けしていた。



「さ、そろそろ夜会が始まるよ。ルロウもシャノン殿も、遠慮せず楽しんでくれ」
「なぜ、参加の流れなんだ?」
「もちろん、今皇城でもっとも噂されているのが君のことで、誰もが次期当主のルロウ・ヴァレンティーノを一目見たいからだよ」

 シャノンとルロウが皇城に来た理由は、青年長との面会のほかに、本日皇城主催で行われる夜会に出席するためでもあった。
 正式に公表せず入国していた青年長の存在も、今宵改めてクア教国からの客人として出席者に紹介する予定だという。

 そして、ルロウが正式な手続きを踏んで登城し、公の場に姿を現したことで貴族たちは騒然としている。
 ようやく今回の夜会で姿を拝見できるのだと、皆期待しているのだ。

「今回の件もそうだが、いつもヴァレンティーノの我儘に目を瞑っているんだ。たまには君たちも、皇族の体裁を保つ手伝いをしてくれないかな」
「…………」

 ルロウは眉を寄せて無言を貫く。
 何も言わないものの、夜会には出席するつもりのようだ。

「別室を用意しているから、二人とも着替えて大広間に行くんだよ。ルロウ、誰彼構わずその目つきで圧することないように注意してくれ」

「おれを獣か何かと思っているのか?」

「ほかの貴族……特に女性陣を怖がらせないでくれと言っているんだよ。君の見た目に釣られて近づいてくる者は多いだろうからね」

「……では、怖がらせずに黙らせてやろう」


 ルロウは最後まであまりいい顔をしていなかった。


< 118 / 128 >

この作品をシェア

pagetop