【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
番外編:高価なペンダント
「これを持っていろ」
シャノンがルロウの婚約者になることを受け入れた日から、しばらく日が経った頃。
恒例になりつつある三階での朝の食事を終えたあと、食器を片付けに部屋を出ていった双子を待っていると、ルロウが何気なしに渡してきたのは赤い宝石が嵌め込まれたペンダントだった。
「これは?」
シャノンは不思議そうにペンダントを確かめる。
黄金の枠の中に収まる赤色の宝石。ルロウの瞳を彷彿とさせる色は、よくシャノンが身につけているリボンと相性が良さそうだ。
「……なんだかすごく高価そうですけど」
「おまえが受け取らないなら、捨てることになるが」
「ど、どうしてですか!?」
「おまえに用意したものを、おまえが要らんというなら、捨てるしかあるまい」
さも当然のように笑うルロウに、たまに出てくるその理屈はなんだろうと思う。
こう言ってくるということは、シャノンが遠慮してつき返せば本気で処分するつもりだ。
「捨ててしまうなら、貰うしかないじゃないですか! ……ありがとうございます、ルロウ」
「ああ――」
不意にルロウは席を立ち、シャノンのそばに寄ってくる。
ひらりと袖が揺れる動きを目で追っていれば、かすかにルロウの香が鼻をくすぐった。
「いくらでも、好きなように使え」
「え……?」
いつの間にかシャノンの首にはペンダントが付けられていた。
ルロウが慣れた手つきで付けてくれたようだが、早業すぎて付けられていることに気づかなかった。
「お待たせ、フェイロウ、シャノン」
「ただいま〜」
その後、双子が帰ってきたので、ペンダントの話題は自然と流れてしまった。シャノンは最後の言葉が気になったが、尋ねる前にルロウは任務に出かけていった。