【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
3話:ルロウ・ヴァレンティーノという婚約者
闇夜の一族ヴァレンティーノ家の次期当主。
ルロウ・ヴァレンティーノの婚約者になることを提案されたシャノン。
衝撃的な提案だったが、衣食住を保証してくれることが約束された状況で、行くあてのないシャノンが断れるはずもない。
ダリアンの説明によると、正式な婚約というわけではないらしい。シャノンがヴァレンティーノ家に留まるための理由のひとつとして、暫定婚約者の立場を与えるということだった。
「ルロウ様……見世物小屋に入ってきた、あの方のことですか?」
「ああ。私の甥にあたる」
あの夜のことを思い出すと、胸がぎゅっと熱くなる。
それだけシャノンには、激烈で、神々しく、忘れられない出来事だった。
「毒素の浄化をこの目で確認しておきたいが、散々利用され魔力が枯渇したいまのお前の状態では、命を落としかねない。しばらくは安静に過ごしてくれ」
「だけど、わたしに婚約者なんて大役、どう考えても務まらないと思うのですが……」
「ああ、ヴァレンティーノの次期当主という肩書きはこの際意識しなくていい」
「そうじゃなくて……」
肩を竦めるシャノンに、それ以外に拒むのはどんな理由が? という目を向けてくるダリアン。
シャノンは説明がつかない気持ちをグッと呑み込んだ。
「婚約者として、わたしはどう振る舞えば?」
「ありのままで構わない。気品や貞淑さなど、お前に求めていないからな」
本当の理由は、毒素の浄化ができるシャノンを保護するためなのだが、公に発表するには色々と順序があるため、それを踏まえて婚約者ということにしておこうというのがダリアンの考えである。