【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
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祈りは、とおに尽きた。
聖なる女人の栄光は、いつ奇跡をもたらしてくれた?
何年も何年も。正しいものだと信じてきた教えが、万人を救うものではないのだと、身をもって知った。
――ああ、また。暁の光がやってくる。
祝福の光とされるそれを、何度恨めしく思ったことか。
こんな気持ちを抱いてしまうわたしは、もう聖女にふさわしくないのだと思う。
「ひいいい! 助けてっ」
見世物小屋に男たちの悲鳴が反響する。
手足を拘束されたまま、シャノンは被りの中からぼう然と虐殺を目にしていた。
先ほどまでの酷遇で、体の芯は冷えきっている。
けれど、彼が現れたことにより指先に温度が戻りはじめていた。
「おかしいな。人身売買も見世物小屋も、ヴァレンティーノはずいぶん前に禁じたはずだ」
その口調はどこか喜悦が滲んでいた。
話す速度さえも睦言を囁くように悠然で、しかし振り下ろす刃は恐ろしくはやく鋭さをもっていた。
「ち、違います、これは違うんです! どうか命だけはっ」
「違う? おまえの目には、おれと違う景色が見えているのか?」
青年は首をかしげる、そして、口の端を歪めた。
「ひいいっ、お願いします、見逃して……っ」
「…………はぁ〜、聞くに絶えない命乞いだ。自分が撒いた種の処理は自分でつけるものだろう。まあ、おまえの微々たる心臓じゃあ足しにもならんが」
真っ黒なローブの下で、発せられた青年の愉快そうな言葉に男は震え上がった。
逃げ出そうと背を向けた瞬間、青年の剣が素早く動く。
背後から左胸を一突き。シャノンを散々利用していた見世物小屋の男は、呆気なく絶命した。
「――おい」
「……っ!!」