【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜



「それで、その餓鬼は?」

 ルロウの興味がシャノンに移り、静かに尋ねられる。
 最初の時間はなんだったのかと言いたくなるが、ダリアンは慣れているのか先ほどと似たような説明を繰り返した。


「名はシャノン。お前が見世物小屋で救った子供の一人だ。紹介したい子がいると話したろう。この子がそうだ」
「それで?」
 

 聞きながら半分興味を失いつつあるルロウに、ダリアンは続ける。


「シャノンをお前の婚約者として、ヴァレンティーノ家に置くことになった。これはすでに決定している」

「――その餓鬼が、おれの、婚約者?」

「ああ」

「婚約者、婚約者、か。それはつまり……おれと、夜、遊んでくれるというコトか?」


 ゆっくり淡々と発言するルロウは、瞳に少しの好奇心を滲ませる。
 言外に含ませた艶のある視線に、乱れた女性たちの姿が思い出されシャノンの胸がぎくりと跳ねた。


「馬鹿を言うんじゃない。先ほどの女たちを見たあとでは、こいつが真に受けるだろう」
「だろうな。おれは、餓鬼は相手にしない」


 ルロウはうっすら唇を引き、どうでも良さそうな口調でささやく。


「――要らん」


 赤い目が、何事もなかったようにそっぽを向いた。

「……」
(今日からこの方が、わたしの……本当に、務まるの?)


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