【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
ダリアンに抱えられて三階の食堂に入ったシャノンは、テーブルに並べられた食事に首を傾げた。
(あれは、リゾット? でも、ちょっと違うような)
漂う香りもリゾットよりサッパリとしている。ほかの食器や料理もシャノンが出されているものとは異なっていた。
すでに食事を開始しているルロウと、その右隣で同じく丸くて白い生地の何かを頬張っているヨキ、そして二人の飲み物を注いでいるハオ。これが彼らが過ごす朝の日常のようだ。
ダリアンは備え付けの椅子を二脚引くと、シャノンに座るよう促し、もう片方の椅子に腰を据えた。
「ねえ、シャノンは足が悪いの?」
ハオの質問に、シャノンはこくりと頷いた。
「何度か怪我をしてしまって、その後遺症でまだちゃんと歩けないんです」
「こうい、しょうー? フェイロウ、なにそれ」
『後遺症』
『ああ、後遺症のことか〜!』
尋ねたヨキは、納得がいった表情を浮かべる。
西華国のものと思われる言語にシャノンは聞き入っていた。
「シャノン。ハオとヨキは西華国出身だ。ルロウは帝国出身だが、長く西華の暗黒街に身を置いていた影響で西華語が堪能に扱える。あの服装も食事も西華のものだ」
「食事もそうですけど、西華国の服は初めて見ました。こんなにきれいなんですね」
「シャノン、気に入った? 華衣かごろもっていうんだよ。ぼくの華衣、どれかあげるよ。女物ばっかりだから」
「え、わたしに?」
「ぜったいに似合うと思う。ぼく、シャノンをおめかししたいな。ねえフェイロウ、いい?」
「好きにしろ」
見た目も女の子らしいハオは、近い年頃のシャノンを着飾りたいようだ。さらっとルロウの許可までとってしまった。
「だってさ、シャノン」
嫌というわけではないが、いまはダリアンが話そうとしているし……とシャノンが内心悩んでいると、食堂の外から慌てた男の声が聞こえてきた。ダリアンの部下だ。