【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
6話:穏やかな日々と過剰有毒者
ルロウとの再会から数日が経った。シャノンの部屋にはほぼ毎日、ハオとヨキが遊びにきている。
今日はハオが華衣と西華の装飾を持ってきたので、シャノンは大人しく着飾らされていた。
手持ち無沙汰になったヨキは、マリーとサーラが用意してくれたお茶菓子を摘みつつ、自分の武器の手入れをしている。
「どうしてフェイロウかって〜? 西華ではそう呼ばれてたからだよ。フェイってほかの国の人間は言いづらいんだって〜。だからフェイと同じ意味のルに変えて、ルロウ〜!」
「西華は名前ひとつでも色々使い分けたりするから、呼び方がいくつあってもべつに不思議じゃないよ。フェイロウが西華名、ルロウが帝国名、愛称でフェイとか。あ、でもフェイは誰にも呼ばせていないと思う」
「それじゃあ、ハオとヨキにもほかに名前があるの?」
「ヨキはヨキ、ハオはハオだけ〜。フェイロウがくれた名前だから、これだけでいい〜」
「ルロウ様が、くれた?」
何気なく言ったヨキの言葉に引っかかり、シャノンは聞き返す。
「ぼくもヨキも、西華の無法地帯で生まれたの。赤子のころに捨てられて、ある程度大きくなるまではその辺の住人に育てられた」
「それは、当主様が言っていた暗黒街とは、違うところ?」
「全然ちがう〜! 暗黒街は『黒明会』っていう闇使いの縄張り。無法地帯はゴミ捨て場〜」
「ゴミ捨て場?」
「うん。要らないものを捨てる場所。なんでも捨てられるよ、ぼくたちみたいな産まれたばかりの子供とかー」
「そんな……」
シャノンは双子の生い立ちを聞いて絶句する。
教会で育てられたようなものであるシャノンは、無法地帯の存在を知ってはいても詳しくは教えられなかった。
身寄りのない子供は孤児院で引き取られるのが当たり前だと思っていたし、現にクア教国では教会が管理する孤児院が多くある。
しかし、西華国はクア教国ほどに身寄りのない人間を引き受けてくれる孤児院が限られているらしい。