【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
「詳しくは知らないけど、後宮費と祭祀費にとんでもないお金がかかってるんだって。年貢や税が払えなくなって無法地帯に逃げ込む人もたくさんいたなー」
「……ハオとヨキは、その無法地帯で、ルロウ様に会ったんだね」
「ううん、ちが〜う。ヨキとハオは、無法地帯のやつらに殺されそうになって、暗黒街の近くまで逃げ込んだんだ〜。そこでフェイロウが助けてくれた感じ〜」
「殺されそうに? どうして?」
「ぼくたちが、過剰有毒者だから。みんな怖がって、早く殺そうって必死になってたの」
クロバナの毒素を吸い込んだ有毒者。そして、その毒素を通常よりも過度に体内に取り込んでしまう体質を過剰有毒者という。
過剰有毒者の特徴は、毒素を吸収しすぎるあまりに、爪や唇が黒く変色してしまうことが一番にあげられる。手遅れになると黒い斑点が表れ、近くの人間に毒素を移してしまう場合もあるため、迅速な対処が必要だった。
「無法地帯にいる有毒者なんて、まず闇使いに会えるわけない。偉い人から順番に毒素を吸い取ってもらうから、西華の無法地帯には毒素で死んだ人間がゴロゴロいたよ」
「ヨキとハオもね、爪も口が真っ黒で、ここで死ぬんだろうな〜ってあきらめてた。そしたら、たまたまフェイロウが通りがかったんだ〜」
「ルロウ様が……」
「あのときのフェイロウ、かっこよかったな。いまもだけどね。追いかけられてたぼくたちに『邪魔、どけ』って冷たく言ってね!」
「え?」
ハオは恍惚とした顔でそのときを思い出しているが、まさかの発言に耳を疑った。