【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
7話:気の向くままに餌付け
その日は、ハオとヨキに抱えられて三階の談話室に来ていた。
帝国に午後のティータイムが風習としてあるように、西華国にも似たような文化があるらしい。
西華茶を飲みながら菓子や軽食をつまむのが毎日の習慣にある双子は、シャノンを談話室に招待してくれたのだ。
談話室には、双子のほかにルロウと、彼の部下が数人いた。
みんなが思い思いに休息をとる中、ハオとヨキに運ばれてきたシャノンは、ルロウの右隣に座らされていた。
「シャノンはフェイロウの婚約者だから、ここに座って!」
「ヨキたちもここに座ろ〜っと」
座席はいくつかのテーブルに分けられている。
シャノンは強制的にルロウと、双子がいるテーブルにつくことになった。
「ルロウ様、お邪魔します」
シャノンはおずおずと挨拶をする。
「そう、緊張するな。おれはおまえを食ったりしない」
「はい……」
ルロウは恐縮しているシャノンを見てほんのり瞳をすぼめる。
ティータイム中、ルロウは特定の誰かと会話をすることはなく、一人で静かに西華茶と菓子を口にしていた。
ルロウのような立場の人間と部下が同じ空間でお茶をするというのも不思議な感じだが、これが彼らの通常らしい。
部下たちはルロウが近くにいることに気を使ってはいるものの、思い思いに茶を楽しんでいる。
これも西華国の文化なのだろうか。
(ルロウ様が隣にいる……みんなと同じように焼き菓子を食べている……選び取っているのは濃そうなものばかり。かなり甘党なのかな)
「シャノン、これ食べてみて」
なにか気の聞いた会話でもするべきかと考えていると、隣に座ったハオが包子パオズという西華国に伝わる菓子を渡してきた。