【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
夢か現実かの区別をつけてくれたのは、粗野に掴んできた青年の手の感触だった。
(あ……手、あたたかい)
「生きてはいるようだ」
真紅の瞳がこちらを覗き込んでいる。
放心していたシャノンの動きを確認すると、素っ気なく掴んでいた手を離して背を向けた。
「おれは地下へ行く。餓鬼は外だ」
「はっ」
青年の命令に、周囲の黒ローブ集団がてきぱきと動きはじめる。
(わたし、助かった……?)
外に出されるまでの短い間、シャノンは自分を救ってくれた後ろ姿をずっと見つめていた。
床には惨たらしい死の数々。
けれど、いまの自分には、青年の後ろ姿しか見えていなかった。