【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜



(このお店、装飾品も少し置いているんだ)

 シャノンの目に入ったのは、色とりどりのリボンが並べられた商品棚だ。
 杖の装飾用として置かれているようだが、髪飾りと併用できるもののようでデザインが豊富である。

(これ……)

 シャノンがじっとリボンを見つめていると、耳元でひんやりとした声が聞こえてきた。

「それが、気に入ったのか?」
「ルロウ……! いえ、そういうわけでは」
「ついでだ、どれがいい?」

 ルロウは隣に立つと、商品棚を眺めて言った。

「いいえ、本当に欲しいというわけではなかったので。それに、わたしはもう、着るもの、食べるもの、住むところ……すでに十分なものをいただいています」

 ダリアンと利害関係が一致した上での待遇とはいえ、なんでもかんでも買ってもらうのは違うと、シャノンは首を振る。
 すると、ルロウはうっすらあった笑みを消して不思議そうにした。

「では、どうして、見ていた?」
「…………ルロウの瞳の色に似ていると思って見ていただけです。透き通るようにきれいな、紅色カーマインの……」
「おれの目が、透き通るように、きれい……?」


 言葉にしてみるとなんだか気恥ずかしくなってくる。
 ルロウは意外そうな声を出し、それから不敵にうっすらと笑んだ。


「――そう言われては、余計になにか買い与えてやりたくなる。慎み深い、おれの婚約者に」

 少し、甘さを含んだ声音にシャノンの目が瞬いた。


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