【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
見知らぬ集団によって外に出され、シャノンは左足を引きずりながら、久しぶりの外気にほっと息をつく。
囚われていたほかの子供たちも命に別状はないようで、助けてくれた大人たちの指示に従っていた。
「あいつはどこまで行ったんだ」
「それが、おひとりで奥を確認してくると言って」
「……困ったやつめ」
外には葉巻をくわえた背の高い男が立っていた。
なんとなく「この中で一番偉い人」のオーラがあり、現にほかの大人たちも男には敬意をもって接しているようだ。
(銀の髪と、真っ赤な目)
シャノンが男の髪と目の色をじいっと見つめていると、その視線に気がついた男は近づいてくる。
「おい」
男の胸下ほどの身長しかないシャノンと目線を合わせるように、男は膝を折って言葉をかけてきた。
目の下には疲労のあとのような、隈がある。
「…………どこか痛むのか?」
大人の人にこんな言葉をかけてもらうのは初めてだったので、シャノンは聞き間違いかとぱちぱち瞬きを繰り返す。
「もうお前たちを傷つける人間はいない。向こうに毛布と食料を用意してある。行って体を休めなさい」
淡々としていたけれど、それはじんわり温かな声調だった。
「…………」
(よかった。もう、みんなを傷つける人はいない。よかった、よかった。この、力も――)
「……っ!」
これまでの緊張がすべて解けるように、シャノンの意識はふっと抜けていく。
男は前に倒れ込んだシャノンの体を受け止めると、外気に晒された首裏を凝視し、目を見張った。
「これは」