【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
「えっ……」
「へえ、珍しい! フェイロウが自分から女にものを買ってあげるなんて。よかったね、シャノン」
会計の対応をしていたハオは、シャノンの杖を片手に目を大きく見開いた。本当に珍しいのか、感情が驚きに満ちている。
「いいな〜ヨキたちにも買ってよフェイロウ〜」
「おまえらには金を渡していただろう。おれが甘やかすのは、婚約者だけだ」
ルロウは機嫌良さそうにヨキをあしらいながら、店員のほうへ向かっていく。
その手には、彼の瞳の色と同じ、真っ赤なリボンが握られていた。
(ルロウも、わたしが正式な婚約者じゃないことは知っているはずなのに。ティータイムでのときといい、たまに甘やかすような言葉と、態度をとってくる……心臓に悪いなぁ)
「あんなこと言うフェイロウ、はじめてだよ。一体どうしたんだろうね、ヨキ」
「ちょっといつもと違うよね〜」
「やっぱりシャノンのことは、ちゃんと婚約者として認めてるってことなのかな! シャノン、あのリボンあとで髪につけてあげるね」
「うん、ありがとう」
クア教国といい、見世物小屋といい。こんなふうに扱われたことがなかったシャノンは、どぎまぎしながら双子と一緒にルロウの戻りを待つのだった。
(気のせい、かな)
……そのとき何となく、チクッとした痺れが首裏に走った気がした。