【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
15話:聞き耳
当初のダリアンの目的は、クロバナの毒素を浄化できるシャノンをルロウのそばに置き、気を許してもらうこと。
それにより浄化を受け入れてくれるのではないかと考えていたそうだが、現実はそう甘くなかった。
ルロウが浄化を望んでいなくとも、シャノンの存在は特別である。
彼がシャノンから興味を失おうと、ヴァレンティーノ家が保護する対象として変わることはなかった。
「シャノン様、おやすみなさいませ」
「おやすみなさい、サーラさん」
ルロウが浄化を望んでいないことを聞かされた日の夜。
就寝支度を終わらせたシャノンは、寝台に腰掛けてふうっと息をついた。
昼間にあった胸のムカムカも自然と収まっている。
それからシャノンは両目を閉じて、身体中に流れる魔力の具合を確認した。
(まだ、半分くらいかぁ。当主様も、全快までもうしばらくかかるって言っていた。……これでいいのかな)
ヴァレンティーノ家に世話になるようになって、早いことにふた月以上が過ぎた。
ダリアンの目的は癒しの力にあるとはいえ、それを無事に扱えるようになるまでは、食べて寝てを繰り返すだけの日々。当主の決定なので周りは気にしていないけれど、さすがにちょっと居心地が悪い。
(でも、わたしにできることって言ったら、癒しの力ぐらい。お掃除や洗濯なら少しは手伝えるけど)
しかし、いまも一応ルロウの婚約者としているシャノンに、使用人が掃除や洗濯を任せてくれるとは思えない。ダリアンに無理を言っても、周囲に迷惑をかけるだけだ。
結局は、早く体調を万全にすることが役に立てる最前の近道なのだろう。
シャノンもそれはわかっているため、余計にため息が深くなった。