【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
18話:心配と剣呑の夜
身支度を整えてもらったシャノンは、今朝ダリアンと話していたことを改めて考えた。
(洗脳、だったのかな)
首裏をそっと擦ると、ざらざらとした窪みになっているのがわかる。
元々、刻印の表面は肌と一体化するように滑らかだった。
それがいつの間にか……というより昨晩いきなりジリジリと焼けて、傷跡みたいになってしまったのだ。
刻印は聖女の証。それだけは理解している。逆を言えば、シャノンはそれ以上のことを教えられていない。そのことに大して疑問にも感じていなかった。
(だけどそれって、おかしいよね。こんなにも、覚えていないなんて)
まるで意図的に消し去られてしまったように、シャノンが思い浮かべられる記憶は全部つぎはぎだらけだ。
孤児院での日々の思い出も、目覚めた時のわずかなものだけ。
知らぬ間に多くのものが欠けていたということを、シャノンは知った。
(……とりあえず、ルロウのところに行かないと)
わからないことばかりに時間を消費しては勿体ない。
それよりも、いまはルロウのことが気がかりだ。
昨晩はシャノンの様子がおかしくなったこともあり、中途半端なところで部屋を追い出されてしまった。
どんなに平静を装い、魔力で覆い隠していたとしても、ルロウの吸収した毒素は不浄の気配を放ち続けている。
(魔力は、全快したとはいえないけれど)
それでも、シャノンは放っておくことができなかった。