【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
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親子ほどの年の差がある少女を金で買い、その後にどんな地獄が待っているのかを、シャノンはあの見世物小屋で知った。
皆、シャノンと同じ歳だった。そして体が徐々に女性らしくなるに連れて、居なくなっていった。
あの子は、どうしているんだろう。
それが分からないほどシャノンは無知な子供ではない。でも、考えてしまう、抵抗も虚しく連れられ、絶望に染まった少女たちの顔が。頭から、離れない。
どうして、どうして、どうして。
あの頃の自分は、平然と見送ってしまったのだろうか。
「……」
「――え? ルロウ?」
そう思いながら目を開いた途端、視界に飛び込んできたのは、シャノンの顔をじいっと見下ろしているルロウの美しい顔だった。
言葉を発さずにこちらを見つめてくるので、状況がいまいち分かっていないシャノンも同じようにルロウを見つめ返した。不思議と、ほっとしたような安堵の心地に包まれる。
「ルロウ……ここは……えっと、わたしは…………」
「起き上がるな、寝ておけ」
上体を起こそうとするシャノンをすぐさま制したルロウは、椅子から立ち上がると、背を向けて部屋を出ていった。
数十秒後、息を切らしたハオとヨキが揃って駆け込んでくる。どうやらルロウが呼びに行ったようだ。
「シャノン!」
「シャノン〜!」
双子の目には、涙が浮かんでいた。
「ハオ、ヨキ――」
いまだに自分の状態が理解できないまま、シャノンが名前を呼ぶと、双子は寝台に飛び乗ってきそうな勢いで駆けてくる。
「おまえたち、目覚めて早々に殺す気か?」
「ぐえーっ」
「いたっ」
呆れた様子でため息をつくルロウは、ハオとヨキの首根っこを掴んで動きを止めた。
双子はルロウを振り返りながら、ぷりぷりと怒っている。
「だってフェイロウ、やっと起きたんだよ〜」
「一ヶ月も目が覚めなかったのにっ」
「……え、一ヶ月?」
今さらシャノンは、自分の声のかすれ具合に気がついた。
おそるおそる自分の手首を確認してみると、せっかく肉がついてきていたはずなのに、小枝のような細さに逆戻りしていた。
(わたし、そんなに眠っていたの……)
それから遅れてダリアンが飛んできて、改めてシャノンは一ヶ月もの間、意識を失っていたことを説明された。