【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
23話:ちょっと様子がおかしい
せっかく一人でも動けるようになってきたのに、しばらくは寝台から離れられない生活が続きそうだ。
それでも浄化によって明らかにルロウから不浄の気配が消えていることがシャノンは嬉しかった。
もう彼は大丈夫。もちろん、また毒素を吸い続ければ話は変わってくるが、それでもしばらくは健康的に過ごせるだろう。
朗報はもうひとつ。どうやらルロウは、欠けていた感覚が癒しの力の影響で戻ったようである。
つまり、感覚を取り戻そうとして毒素を無闇に吸収しなくてもよくなり、暴力性や支配欲も抑えられるということだった。
「全部全部、シャノンのおかげだよ〜」
「本当にありがとう」
毒素を吸収したときのルロウの症状について、双子は把握していたようだ。目覚めてからというもの、何度もお礼を言ってくるハオとヨキの姿に、二人もずっと心配していたことなんだろうなとシャノンは思った。
それでもひとつ、気がかりなことがあるとすれば――
「それじゃあ、ちょっと出かけてくるから」
「シャノンはフェイロウと一緒にいてね〜」
シャノンに昼食を運んできた双子は、元気よく手を振って部屋を出ていく。前々からシャノンに引っ付いていた二人だが、くだんの件があってからさらに好意的になった。
それはシャノンにとっても嬉しいことなのだが……。
「……あの」
「なんだ」
「ルロウは、一緒に行かなくていいんですか?」
「わざわざおれが動かなくとも、あいつらで事足りる」
「そう、ですよね」
それもそうかとから笑いを浮かべれば、ルロウは珍しいものでも見るようにシャノンを見据える。
(ルロウ……どうしてずっとここにいるんだろう)
ここ数日、朝起きてしばらくするとルロウはシャノンの部屋に訪れて居座っていた。
ときには難しそうな書類に目を向け、ハオとヨキを通して部下らへ指示を出し、暇があるとシャノンの部屋にある童話本を眺めて過ごしていた。