【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
24話:変化と緩和
魔力の回復までまだしばらくかかるが、いつまでも寝台で寝たきりではいけないということで、シャノンは少しずつ屋敷を動き回ったり、中庭で過ごすようにもなった。
……とはいっても、まだ自分の足で歩いているわけではない。
シャノンが目覚めてから日が経ち――今日は風に当たるため、中庭まで来てきた。
「あの、今日、ハオとヨキは……」
「外に出ているが、なぜ、何かと双子を気にする?」
「前までは二人がよく付き添ってくれていましたから、ちょっと気になって」
「……おれでは不服か?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
耳元近くでルロウの声が響くたび、シャノンは落ち着かなくて仕方がなかった。
中庭に降りるためルロウに抱えられるのは今に始まったことじゃない。でも、何度経験したところで慣れそうにない。
「ほら、おとなしく座っていろ」
「ありがとうございます」
ルロウは中庭に備え付けてある椅子にシャノンを降ろす。淡白で乱暴な言葉とは違って衝撃が一切こないよう配慮がされていた。
実年齢よりも数段幼く、発育が乏しいシャノンを持ち上げることなどルロウからしてみれば造作もないことだろう。双子が二人で担いでくれるときより安定しているし、移動もスムーズではある。
しかし、一体どこにヴァレンティーノの次期当主を移動の足として使う人間がいるのだろう。……まあ、ここにいるわけなのだが。
甲斐甲斐しく、という表現は似つかわしくなく当てはまらないが、ルロウのシャノンに対する行動は、それとほぼ大差ないものだった。
(今日こそ、聞いてみよう)
いつも何かとタイミングを逃していたが、シャノンはずっと気になっていたことを口にした。
「ルロウはわたしのこと、殺したいとは、もう考えてはいないんですか……?」
「…………は?」
シャノンに背を向けて立っていたルロウは、小さく声を漏らしてこちらを振り返った。
細く綺麗な白金色の髪が風に吹かれ、その光景が妙にシャノンの目に焼き付く。