【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜

25話:理由とすり込み



 その日、ルロウと双子が揃って用事があるため、シャノンは久しぶりに一人きりの時間を部屋で過ごしていた。

 マリーとサーラに消化の良いオレンジムースのおやつを貰い、にこにこしながら平らげたあと、執務の合間を縫ってダリアンが様子を見にやってくる。

 ダリアンの顔を見たシャノンは、「そういえば……」と、あることを思い出した。
 記憶返りで見た、クア教国で追っ手から逃げていたときのことである。


「クロバナの種を、食っただと!?」
「は、はい」
「死にたいのかお前は!」
「あの時は、食べられる果実だと思っていて……」


 状況が状況だったのでシャノンを責められるわけもなく、ダリアンは半分ほど浮かしていた腰をまた椅子に戻した。
 さすがのダリアンでも動揺を隠せなかったのか、困惑めいた嘆息をもらし、額に手を当てている。


「クロバナの種なんざそれこそ猛毒だ。蔦よりもさらに瘴気が凝縮されているからな。それを取り込んで生きていられたということは……。確定するのはまだ早い。だが、お前の言うとおり体に特別な抗体ができたのかもしれない」


 クロバナの種や蔦を用いた実験は、これまで数多くの人の手により行われてきた。

 現在はかなり規制されているが、百年以上前はそれこそ動物や人を実験体として使い、多くの犠牲をはらいながら研究が進められたという。

 クロバナの種、蔦など、体に取り入れた際に起こる身体症状を記録するための試験では、実験体全員が数時間後に黒い斑点を発症し死亡が確認された。

 今も公にはできないが研究は進められている。
 それでも目立った成果が得られていないのが現状である。


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