【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
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いまから数百年以上も前。
まだユストピアが大陸国として通っていた頃、海を越えてやってきた民族によって領土戦争が勃発した。
戦を憂いた大陸国民は、魔法の力と研究によって人体に影響を及ぼす毒素を放つ花、クロバナの種を作り出すことに成功する。
人間のみに害を与えるクロバナは、種をまくとたちまち根を生やして土壌や川、山や森林に蔓延り、蔦は高い壁となって侵略民の進行を防いだという。
クロバナの蔦は大地を三つに分断し、これがその後の帝国、西華国、教国となった。
そして、クロバナによって互いの領地の行き来が不可能となり、領土戦争もなんとか終結を迎えることとなった。だが、戦は終わってもクロバナの進化は止まらなかった。
クロバナの種を生み出した大陸国民の子孫である帝国の民は、クロバナの駆除を試みたが、どういうわけか刃や火が一切通らなかったのだ。
人々が駆除に力を入れている間にも、クロバナは地中の魔力を糧として成長を続け、たくさんの花を咲かせ、そして毒素を放ち続けた。
いずれ毒素が大陸中を呑み込む恐怖を前に為すすべをなくしていたとき、毒素の脅威を抑えることができる者が現れた。
それが、帝国を故郷とする初代ヴァレンティーノ当主だ。
闇の魔力を有する初代ヴァレンティーノは、クロバナの毒素にも同じく闇の魔力が含まれていることを突き止めた。
クロバナを消滅させることは不可能だったが、害のある毒素を体内に吸収することで勢いを止めることに成功したのである。