【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜

26話:強制お昼寝タイム




 ふと、懐かしい光景が広がっていた。
 シャノンはすぐにこれが「記憶返り」だと悟る。
 見えてきたのは、最近よく振り返る見世物小屋での、一場面だった。


『一気に浄化するなって言ってんだろ!! 金を出させるために数回にわけで通わせるんだよ!』
『でも、それではあまりにも……』
『口ごたえするんじゃねぇ!』


 バシッ、バシッ。
 拷問用器具の鞭で容赦なく背中を叩かれる。続いて足裏、ふくらはぎと、抵抗する意思を無理やり剥ぐように、何度も痛めつけられる。

 最近、ふらつきながらもようやく歩けるようになってきたからだろうか。足が痛めつけられる記憶ばかり思い出す気がする。


『逆らえないように、またこうしてやる』


 見世物小屋の男は慣れた手つきでシャノンの足首をナイフで切った。その後、乱暴に檻に押し込まれ、流れる血を強く手で押さえながら、寒さに震え夜を耐えた。

 耐えたところでシャノンに待っているのは希望のない朝である。

 そんな毎日が続いて、続いて、続いて――次第に息苦しくなってくる。
 これは記憶返りのはずなのに、妙に鮮明で空気が重々しい。


(……これは本当に、夢? いま起こっている、現実じゃなくて?)


 自分の判断を疑い始めたとき、不意に誰かの影が現れた。


『愉しい愉しい見世物小屋は…………ここか?』


 その言葉を最後にようやく記憶返りは終わり、シャノンの意識は現実に戻った。

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