【完結】「暁光の世から消えて死ね」 〜教会を追放された見世物小屋の聖女は、イカれた次期覇王の暫定婚約者になる。(※手のひら返しで執心されています)〜
「月の巡りか。そうか。そんな見た目だが、お前も15歳だから始まっていてなんら不思議じゃないな」
もちろん尋ねる相手はダリアンだ。
マリーやサーラの反応を見るに、あまり公に話したり男性に話す内容ではないものだと思っていたが、ダリアンは実にあっさりしている。
シャノンが拍子抜けしていると、ダリアンは考えを読み取ったのか鼻で笑った。
「いまだに古臭い国の教えでは、月の巡りは穢れや不浄だと言われているがな。生命の誕生に欠けてはならない大事な身体の変化だ。クア教国のような国とは理解の度が違う」
もはや古臭い国がどこなのか言ってしまっているようなものだが、これなら話は早いと話を進めた。
「マリーさんとサーラさんが言っていました。月の巡りがくると、体つきが大人の女性のようになっていくと。だけどそれは、普通の人の場合で、わたしは……」
数年前の過酷な日々や栄養不足ですっかり痩せてしまったシャノンは、実年齢が15歳だが、見た目はまさに子供のようである。
15歳も立派な大人とはいえない年齢だが、シャノンの場合は幼すぎるのだ。
しかしそれは、今まで月の巡りがきていなかったから成長が乏しかったという理由では決してない。シャノンが子供のような体なのは、教会の施しが関係しているのだ。
「シャノン、初めてこの屋敷で目覚めたときにした会話を覚えているか? お前に年齢を聞いたことがあっただろ」
「はい、覚えています」
あの頃、ダリアンはシャノンが15歳と聞いて、「多く見積もっても12やそこらだろう」と言っていた。
「私があのとき感じていたのは、公務を行うクア教国の聖女は皆揃って小柄な印象だったということだ。ローブで姿や顔は隠せても身長を偽るのは手間がかかる。かといって聖女全員が背の低い女性というのも考えにくい。ならば、教国は聖女の成熟期を何らかの方法で止めているのでは、とな」
「――……あ」
「心当たりがあるだろう?」
シャノンはこくりと頷き、首裏の刻印に手を伸ばした。