白い嘘と黒い真実
__三十分後。
「ごめん、大分待たせちゃったかな?」
「い、いえ。大丈夫です」
暫くしてからようやく高坂部長が現れた途端、緊張で心拍数が一気に上昇し始め、自然体を装うとするも、つい笑顔がぎこちなくなってしまう。
「あの、それより話って……」
兎に角、一刻も早くこの悶々とした気持ちから開放されたくて。到着して早々、一息付く間を与えさせず私は早速本題に触れてみる。
「そんなに急かされるとちょっと緊張しちゃうな。とりあえず、何か頼んでからでもいいかな?」
「……あ。そ、そうですよね。すみません、つい先走ってしまって」
けど、それをいつもの爽やかな笑顔でかわされてしまい、私は少しバツが悪くなって彼から視線を外す。
これだと逆にがっついているように見えてしまっただろうか。
こういった事には疎いから、どう接するのが正解なのかよく分からない……。
とりあえず、焦らないで落ちついていこうと。
私は密かに深呼吸をして、彼から話があるまで大人しく待つ事にした。
「俺が椎名さんに伝えたい事は一つだよ。俺は君が好きだ」
「へっ?」
それから、注文を終えて少しの間沈黙が流れた後、まさか唐突に告白されるとは思ってもいなかったのでつい声が裏返ってしまう。
「前にも言ったけど、やっぱり椎名さんの事が諦められなくて……。だから、せめてこれからは良い友人として付き合っていくのはダメかな?」
すると、これまでずっと穏やかな笑みを見せ続けていた高坂部長の表情が段々と雲掛かってきて、まるで捨てられた子犬のような目で見つめてくるその不安気な眼差しに、思わず胸が締め付けられる。
……どうしよう。
幹部の人間を友人として接するのは少し気が引けるけど、高坂部長のことは嫌いではないし、むしろ好き。だから、こんな話は願ったり叶ったりだけど……。
このまま流されていいのか私?
本当はこれ以上紗耶に変な疑いを持たれたくないので、出来れば関わりたくないけど、あまり避け続けると高坂部長を傷付けてしまいそうで、それはそれで心苦しい。
今後の仕事においても支障が出そうだし、私自身もそこまで彼を拒否したいわけではないから……。
「はい。もちろんです。こんな私で良ければよろしくお願いします」
上手い断り方が見つからず、ここは一先ず彼の要望受け入れようと。短時間で頭をフル回転させた結果、私は素直に首を縦った。
「ありがとう。それすらも断られたらどうしようって、ずっと不安だったんだ」
その途端、彼の心から嬉しそうな眩い笑顔を魅せられてしまい、不覚にも心臓が思いっきり反応してしまう。
ああ、やっぱりダメだ!
その顔でその台詞は反則過ぎるでしょっ!!
お陰で母性本能をくすぐりまくられた私は、危うく呼吸困難に陥りそうになり、暴走する心を何とか鎮める為、再び気付かれないよう小さく深呼吸をする。