白い嘘と黒い真実
「そ、そんな大事になるようなものに関わった覚えなんて全くないです。高坂部長は父親の裏家業を仕方なく手伝っているそうですし、それ以上の何かに触れるようなことなんて私は何もしていないのに……」
そこまで話した途端、はたと余計なことを口にしてしまった事に気付くも、時既に遅し。
恐る恐る顔を覗いてみると、眉間に皺を寄せながら更に厳しい目付きでこちらを凝視してくる彼の鋭い視線に、思わず身を縮こまらせてしまう。
「あの男がそう言ったんですか?……というか、椎名さんはその事を本人に直接話したんですか?」
そして、低い声で静かに尋ねてきた澤村さんの険しい表情に怯えながら私は再び無言で首を振ると、暫しの間沈黙が流れた後、呆れたように深い溜息を吐かれてしまった。
「…………まあ、良いです。とりあえず、そういう事なので合鍵は暫く持っていて下さい。また何かあればここへ逃げ込んで、何もなければこうして夕飯を作りに来てもらって構いませんから」
果たしてこれでいいのか不安が過ったけど、最後の一言によって一瞬でその気持ちは吹き飛ばされ、私は目を輝かせながら体を前のめりにさせる。
「ほ、本当にいいんですか?迷惑じゃないですか?そんなこと言ったら毎日作りに来ちゃいますけど?」
あまりの嬉しさに半ば脅しみたいな言い方になってしまったと自覚はありつつも、頭の中は期待が膨れ上がりもう抑えられない。
「いいですよ。何度も言いますけど、飯を用意してくれるのは有難いですから」
すると、そんな私の威勢に怖気付くことなく、とても落ち着いた物腰でやんわりと微笑んでくれたことに、多大なる感動が押し寄せてくる。
毎日通っていいだなんて。
ここまで来たら、本当に脈ありと考えてもいいかもしれない。
こんな通い妻的なことが許されるのなら、もう一度この気持ちを伝えれば、今度こそ何かが変わるかも……。
「あ、あの……澤村さん、私……」
自分の身に危険が及ぶかもしれないと忠告されたばかりなのに、その恐怖心よりも彼に対する期待感の方が大いに上まっているなんて、本当に能天気にも程があるという自覚はある。
けど、ここまで来ると走り出した想いを止めることなんて出来ず、心が暴走したまま彼の名前を口にした瞬間だった。
テーブル脇に置いてあった澤村さんの携帯が突然鳴り出し、肝を抜かされた私はそこで話が途切れる。
「っあ。職場からなんでちょっと失礼します」
そして、間髪入れずに彼は携帯を手に持つと、席を外してから窓際の方へ行ってしまった。
そこまで話した途端、はたと余計なことを口にしてしまった事に気付くも、時既に遅し。
恐る恐る顔を覗いてみると、眉間に皺を寄せながら更に厳しい目付きでこちらを凝視してくる彼の鋭い視線に、思わず身を縮こまらせてしまう。
「あの男がそう言ったんですか?……というか、椎名さんはその事を本人に直接話したんですか?」
そして、低い声で静かに尋ねてきた澤村さんの険しい表情に怯えながら私は再び無言で首を振ると、暫しの間沈黙が流れた後、呆れたように深い溜息を吐かれてしまった。
「…………まあ、良いです。とりあえず、そういう事なので合鍵は暫く持っていて下さい。また何かあればここへ逃げ込んで、何もなければこうして夕飯を作りに来てもらって構いませんから」
果たしてこれでいいのか不安が過ったけど、最後の一言によって一瞬でその気持ちは吹き飛ばされ、私は目を輝かせながら体を前のめりにさせる。
「ほ、本当にいいんですか?迷惑じゃないですか?そんなこと言ったら毎日作りに来ちゃいますけど?」
あまりの嬉しさに半ば脅しみたいな言い方になってしまったと自覚はありつつも、頭の中は期待が膨れ上がりもう抑えられない。
「いいですよ。何度も言いますけど、飯を用意してくれるのは有難いですから」
すると、そんな私の威勢に怖気付くことなく、とても落ち着いた物腰でやんわりと微笑んでくれたことに、多大なる感動が押し寄せてくる。
毎日通っていいだなんて。
ここまで来たら、本当に脈ありと考えてもいいかもしれない。
こんな通い妻的なことが許されるのなら、もう一度この気持ちを伝えれば、今度こそ何かが変わるかも……。
「あ、あの……澤村さん、私……」
自分の身に危険が及ぶかもしれないと忠告されたばかりなのに、その恐怖心よりも彼に対する期待感の方が大いに上まっているなんて、本当に能天気にも程があるという自覚はある。
けど、ここまで来ると走り出した想いを止めることなんて出来ず、心が暴走したまま彼の名前を口にした瞬間だった。
テーブル脇に置いてあった澤村さんの携帯が突然鳴り出し、肝を抜かされた私はそこで話が途切れる。
「っあ。職場からなんでちょっと失礼します」
そして、間髪入れずに彼は携帯を手に持つと、席を外してから窓際の方へ行ってしまった。