白い嘘と黒い真実
__一時間後。
「……うう、泣ける。五歳児の育児放棄とか酷すぎる」
今回は生活安全課主体の物語であり、虐待された子供を救うという、このドラマにしては何とも痛々しい話に耐えきれず、最後には思わず涙腺が崩壊してしまった。
「どうぞ」
そんな私を横目に、澤村さんはさり気なくティッシュを差し出してくれて、そのスマートな気遣いに胸を打たれながらも、私は遠慮なく数枚もぎ取り鼻を噛む。
「親に刷り込まれて、あんな小さい子が虐待されているのに嘘付くなんて……本当に親を選べないのが可哀想です」
フィクションではあるけど、テレビのニュースで見るような車内置き去りや、時折の暴力、家事放棄。そして、子役の迫真の演技と相まって、終盤で無事保護出来たシーンでは、とてもじゃないけど涙を抑えられることなんて出来なかった。
「そうですね……。でも、現状はもっと酷い家もありますから」
そうしみじみと話す澤村さんの言葉に更なるショックを受けた私は、それ以上の事を想像することが出来ず唖然としてしまう。
確かに、澤村さん達は普段では知り得ない程の深い闇を沢山目の当たりにして、これまで取り締まってきているのだろう。
それ故なのか。警察の人とよく関わるようになってから、最近彼等の取り巻くオーラはどこか一般人と少し違って見えるような気がして。
始めはあまり良い印象が持てなかったけど、これまで澤村さんに沢山助けられたのと、ドラマの影響も相まり、前と比べて警察に対する印象がかなり変わったと思う。
とりあえずテレビも見終わり、そろそろお風呂にも入らなくてはいけないので、真面目に帰る時間となった私は重い腰を上げて自分の鞄を手に取る。
「それじゃあ、今日はこれで帰ります。……あの、本当にまた明日以降もお邪魔していいんですね?」
そして、未だ彼の話を鵜呑みにしていいのか不安が拭えず、再度確認のために恐る恐る尋ねてみた。
「ええ、大丈夫ですよ」
そんないつまでも疑心暗鬼な私が可笑しかったのか。澤村さんは含み笑いをしてから、穏やかな表情で答えてくれたことに、胸の突っかかりが全て取り除かれていくような気がした。
……ああ、なんだろう。
この甘くて愛しい瞬間。
一度諦めかけたのに、またこうして満たされた気分を味わえるなんて、これはもう期待しかないような……。