白い嘘と黒い真実
まるで厄病神を見るような目を向けられた私は、ショックのあまり涙目になってくる。

「あ、あの、さ、澤村さんは私の事が嫌いなんですか?」 

おそらく、そういう意味で言ったのではないと思うけど、やけに感情が込もっていた為、私はつい踏み込んだ質問をしてしまった。

けど澤村さんは特に表情を崩す事なく、あの鋭い眼差しでじっとこちらを見据えてきて、その目力に圧倒された私はおずおずと彼を見返す。

「いえ、そうではありません」

すると、返ってきた答えは意外にもあっさりと否定してくれて、その言葉に安堵の息を漏らしたのも束の間。

「ただ、あなたみたいなタイプは生理的に受け付けないだけです」

嫌いよりも更に上の拒否反応を示されてしまい、私は二度のショックで言葉を失う。

「でも、それはあくまで個人的な話で、警察としてはしっかり対応していくつもりです。なので、何かあれば気軽に相談して下さい」


……………いや、そう言われましても。


今はっきりと生理的無理発言をしてきた人にどう気軽に相談しろと。
むしろ、この話もただの社交辞令でしかないのだろうか……。


これ以上何も言えなくなった私は、ただ無言で首を振るしかなく、一先ず手に持っていた菓子折りを彼に渡した。

「あ、あの。と、とりあえず今後とも何卒よろしくお願いします」

そして、挨拶だけはしっかりしようと、深く頭を下げると、澤村さんはにこりともせずそれを静かに受け取る。

「お気遣いありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」

それから、感情のない声でそう応えると、さっさと部屋の中へ入っていってしまったのだった。
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